骨粗鬆症治療について
骨がもろくなり、骨折リスクが高くなる疾患
骨粗鬆症は、老化などが原因となって骨量が減少し、骨折リスクが高くなる疾患です。
骨に含まれるカルシウムやマグネシウムなどのミネラル量（骨密度）は、20～30歳頃の若年期をピークに、年を重ねるとともに減少していきます。
この骨密度が減少する事によって骨粗鬆症と言われる状態になり、背骨の圧迫骨折をきたし背中が曲がる、軽度の転倒で骨折するといった事態を引き起こします。
早期発見、早期治療が大切です。
女性に多い骨粗鬆症
骨粗鬆症は、女性を中心に、年々増加の一途をたどっています。
女性ホルモン（エストロゲン）の分泌が低下する更年期以降に特に多く見られます。
エストロゲンには、骨吸収を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑制する働きがありますが、分泌量減少により骨吸収＞骨形成となり、骨がもろくなります。
50歳前後から骨量は急激に減少し始めます。早めに精密検査を受ける事をお勧めします。
一方で、偏食や極端なダイエット、喫煙や過度の飲酒なども骨粗しょう症の原因と考えられており、最近では高齢の女性だけでなく、若い女性の骨粗しょう症も問題視されています。
骨粗鬆症の検査
骨粗鬆症の診断には、骨密度の測定、 血液・尿検査、FRAXなどが行われます。
骨密度の測定
骨の強さを判定する際は骨密度を測定します。
全身の骨密度を判断するには大腿骨、腰椎の測定が有用です。
検診では超音波による測定などで低値を指摘された方は検査をお勧めします。
当院では、DEXA骨密度測定装置による骨密度の測定を大腿骨、腰椎で行っております。
4ヶ月に1回の検査を行っております。
DEXA法は現在、骨量測定における標準的な検査法として重視され、骨粗鬆症の精密検査や、治療の経過観察、また骨折の危険性予測において非常に有用です。
血液検査・尿検査
骨代謝マーカーを調べることにより、骨の新陳代謝の速度がわかります。骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人では骨密度の低下速度が速いため、骨密度の値にかかわらず、骨折の危険性が高くなっています。
FRAX検査
FRAX（fracture risk assessment tool）はWHO（世界保健機関）が開発した「骨折リスク評価法」です。
FRAXは40歳以上の方が対象で、今後10年間の骨折リスクの診断が可能になります。
12の質問に答えると、10年以内に骨折する確率（%）が、自動的に算出されます。
当院では計算機を設置しておりますのでお気軽に声をかけて下さい。
骨粗鬆症の予防と治療
骨粗鬆症の原因のうち、年齢や性別、遺伝的な体質などは変えることができません。
食生活や運動などの生活習慣を見直すことにより、予防と改善が可能です。
食事療法
治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるCa(カルシウム)やたんぱく質、および骨のリモデリング＊に必要なビタミンD・Kなどです。
カルシウムは食品として700～800mg/日、ビタミンDは400～800IU/日、ビタミンKは250～300μg/日を摂取することが推奨されています。
これらの栄養素を積極的に摂りながらバランスの良い食生活を送ることが大切です。
＊リモデリング：骨を壊す働きをする「破骨（はこつ）細胞」が骨を吸収する一方で、骨を作る働きをする「骨芽（こつが）細胞」が、破骨細胞によって吸収された部分に新しい骨を作る代謝作用のこと。
積極的に摂りたい栄養素を多く含む食品
- カルシウム……牛乳、チーズ、干しえび、しらす、ひじき、わかさぎ、いわしの丸干し、えんどう豆、小松菜、モロヘイヤ など
- たんぱく質……肉類、魚類、卵、乳製品、大豆 など
- ビタミンD……あんこうの肝、しらす干し、いわしの丸干し、すじこ、鮭、うなぎの蒲焼き、きくらげ、煮干し、干し椎茸 など
- ビタミンK……納豆、抹茶、パセリ、しそ、モロヘイヤ、春菊、おかひじき、小松菜、ほうれん草、菜の花、かいわれ大根、にら など
運動療法
骨は、運動をして負荷をかけることで丈夫になります。さらに、筋肉を鍛えることで身体をしっかり支えられるようになったり、バランス感覚が良くなったりして転倒防止にもつながるため、運動療法は骨粗鬆症の治療に欠かせません。
当院のリハビリでは筋力増加、維持などの運動療法を積極的に行っております。
薬物療法
骨密度検査にて骨粗鬆症が認められた場合、食事療法や運動療法に併せて薬物療法を開始します。
どの薬で、いつから治療を開始するかについては、個々の患者様の年齢や症状の進み具合などを考え合わせながら、医師が判断します。
現在、治療に用いられている薬には、主に以下のようなものがあります。
ビスフォスフォネート製剤
骨吸収を抑制により骨形成を促し、骨密度を増やします。
骨を壊す破骨細胞に作用し、過剰な骨吸収を抑制します。
骨吸収が緩やかになると、骨形成が追いついて、密度の高い骨ができ上がります。
SERM（サーム）
骨に対しては、女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり、骨密度を増加させますが、骨以外の臓器（乳房や子宮など）には影響を与えません。
活性型ビタミンD
カルシウムの腸管からの吸収を増やし、骨形成と骨吸収のバランスも調整します。
ビタミンK
骨のタンパク質の働きを高め、骨の質を改善します。骨折を減らす効果があります。
カルシトニン製剤
骨吸収を抑制する作用があり、強い鎮痛作用も認められ、骨粗鬆症に伴う背中や腰の痛みに用いられます。痛み止めの注射と同時に週1回注射を行います。
副甲状腺ホルモン製剤
骨形成を促進して骨量を増やし、骨折を減少させる薬です。専用キットを用いて1日1回御自宅で自己注射する薬と、週1回医療機関で注射する薬があり、使用期間が決められています。
複数個所の骨折、骨密度の著しい減少など、重症の患者さんに対して用いられます。
抗RANKLモノクローナル抗体
破骨細胞は、骨芽細胞と結合することによって骨を壊す細胞になります。この結合する部分（RANKL）をブロック、結合を阻害して骨破壊を抑える薬です。
6ヶ月に１回の皮下注射を行います。
効果がある分、血中のカルシウム濃度が下がるため、ビタミンD製剤やカルシウム製剤を毎日服用して頂き、定期的に採血検査を行います。